東京地方裁判所 平成2年(特わ)329号 判決 1990年6月26日
本籍
福島県相馬市程田字潜石五四番地
住居
東京都三鷹市中原二丁目二五番一三号
会社役員
草野哲
大正一四年一月一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官渡辺咲子、西尾正出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金七〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和四六年から東京都調布市佐須町五丁目一八番地一〇(昭和六二年一月二六日以後は、同都三鷹市中原二丁目二五番一三号)に居住し、家畜商(競走馬の売買)を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、事業所得につき売上高の一部を除外し架空仕入を計上し、雑所得につき受取利息を除外し、あるいは貸付仲介手数料収入、不動産仲介料収入を除外するなどの方法により所得を秘匿した上
第一 昭和五九年分の実際総所得金額が九五七三万六二〇八円あつた(別紙1修正損益計算書及び別紙2脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、昭和六〇年三月一三日、東京都府中市分梅町一丁目三一番地所在の所轄武蔵府中税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の総所得金額が二五〇万九〇九四円であり、これに対する所得税額は一九万二五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成二年押第四〇〇号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額五三九五万八五〇〇円と右申告税額との差額五三七六万六〇〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ
第二 昭和六〇年分の実際総所得金額が一億三八二〇万五一七三円あつた(別紙3修正損益計算書及び別紙4脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、昭和六一年三月一四日、前記武蔵府中税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の総所得金額が五四八万六七七一円であり、これに対する所得税額は五八万四四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成二年押第四〇〇号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額八三四三万一六〇〇円と右申告税額との差額八二八四万七二〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)を免れ
第三 昭和六一年分の実際総所得金額が一億九七六六万三四四六円あつた(別紙5修正損益計算書及び別紙6脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、昭和六二年三月一四日、前記武蔵府中税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が一二一九万四八五四円であり、これに対する所得税額は既に源泉徴収された税額を控除すると三五万二〇四八円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(平成二年押第四〇〇号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億二二二五万八六〇〇円と右申告税との差額一億二二六一万〇六〇〇円(別紙6脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書六通
一 中川喜一、伊藤喜八郎、芦谷清太、正入木健次、中堤忠良、龍野諄三、曽田正雄の検察官に対する各供述調書
一 検察事務官作成の売上高、仕入高、期末棚卸高、支払手数料、受取利息、受取割引料の捜査報告書
一 収税官吏作成の租税公課、水道光熱費、旅費交通費、接待交際費、損害保険料、減価償却費、利子割引料、飼育料、社会保険料控除、損害保険料控除の調査書
一 税務署長作成の証拠品提出書及び証明書
判示第一、第二の各事実につき
一 収税官吏作成の通信費、車両費、生命保険料控除、源泉所得税の調査書
判示第一、第三の各事実につき
一 収税官吏作成の荷造運賃の調査書
判示第一の事実につき
一 収税官吏作成の修繕費、消耗品費、福利厚生費、事務用品費、貸倒金、借入金返済、支払割引料、医療費控除、扶養控除の調査書
一 押収してある昭和五九年分の確定申告書一袋(平成二年押第四〇〇号の1)、同青色申告決算書一袋(同号の4)
判示第二、第三の各事実につき
一 検察事務官作成の期首棚卸高、貸付仲介手数料収入、不動産仲介料収入の捜査報告書
一 収税官吏作成の青色申告控除の調査書
判示第二の事実につき
一 検察事務官作成の貸倒損失の捜査報告書
一 押収してある昭和六〇年分の確定申告書一袋(平成二年押第四〇〇号の2)、同青色申告決算書一袋(同号の5)
判事第三の事実につき
一 収税官吏作成の雑益の調査書
一 押収してある昭和六一年分の確定申告書一袋(平成二年押第四〇〇号の3)、同青色申告決算書一袋(同号の6)
(法令の適用)
罰条 各所得税法二三八条一項、二項
刑種の選択 懲役刑と罰金刑の各併科
併合加重 刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判事第三の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項
労役場留置 刑法一八条
執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)
よつて、主文のとおり判決する。
(求刑 懲役二年六月及び罰金八〇〇〇万円)
(裁判官 柴田秀樹)
別紙1
修正損益計算書
草野哲
自 昭和59年1月1日
至 昭和59年12月31日
<省略>
別紙2
脱税額計算書
昭和59年分 草野哲
<省略>
別紙3
修正損益計算書
草野哲
自 昭和60年1月1日
至 昭和60年12月31日
<省略>
別紙4
脱税額計算書
昭和60年分 草野哲
<省略>
別紙5
修正損益計算書
草野哲
自 昭61年1月1日
至 昭61年12月31日
<省略>
別紙6
脱税額計算書
昭和61年分 草野哲
<省略>